わが子が食物アレルギーかも!血液検査はどうする?
厚生労働省によると約15年前から食物アレルギーが増加し、1歳未満の乳児の発症が最も多いといわれています。1歳未満といえば、まさに離乳食をスタートする時期。ママにとっては、子どもに食物アレルギーがあったらどうしよう…と気をもんでしまうところです。中には離乳食を始める前に血液検査を受けさせて、アレルギーがあるかどうかを調べたいという親も少なくありません。
今回はわが子が食物アレルギーかも!と不安になったときに血液検査をどうするかについてお伝えします。
離乳食を始める前に血液検査をすべきなの?
食物アレルギーを心配するあまり、「離乳食を始める前に血液検査をしてアレルギーがないかを調べてください」と医療機関を訪れる親が少なくないようです(※1~3)。
食物アレルギーをはじめとしたアレルギーは、「症状」から診断することが原則とされています。あくまでも症状があって、はじめて食物アレルギーと診断できるのです。そのため、血液検査だけではアレルギーの診断は難しいといわれています(※1、※3)。血液によるアレルギー検査は参考程度にすぎないのです。
例えば、ある食べ物に対する血液アレルギー検査を受けて陽性が出たとします。しかし、陽性が出たからといって、必ずしもそれを食べたり触れたからといって症状が出るとは限りません。逆に検査で陰性だったにもかかわらず、その食べ物を食べたり触ったりしてアレルギー症状が出てしまうケースもあります(※3)。
また、特定の食べ物をほんの少し摂取しただけで症状が出ることもあれば、今まで普通に食べていたものでもある日突然起こることもあるようです(※1)。
つまり、血液検査の結果からは体質やアレルゲンのおおまかな傾向を知ることができても、実際に食物アレルギーの症状が出るか否かの判断をすることは難しいのです。食物を食べてみて出た症状から診断するのが一般的です。そのため、離乳食を開始する前の子どもが血液検査を受ける必要はないといわれています。
ただし、次のようなケースでは赤ちゃんでも検査を受けることがあります。
離乳食前に血液検査を受けるケース
乳児のうちからステロイド軟膏が必要なくらいのアトピー性皮ふ炎などがある赤ちゃんは、医師の判断により離乳食前でも検査を受ける場合があります。これは、皮ふ炎の症状からみて、アレルギー体質が強く疑われるためです。
アレルギー体質が疑われる赤ちゃんは、食べ物に対してもデリケートな反応をすることがあり、食物アレルギーに移行する確率も高まるといわれています(※1、※2)。このようなケースでは専門医の判断により、経過観察や肌のコントロールをしたうえで、検査が行われます。必要に応じて特定の食べ物を除去するなどの対応が指導されます。
このように赤ちゃんの皮ふの状況と食物アレルギーは関連性があると指摘されています(※4)。ただし、乳児の頃は乳児湿疹が出ることもあれば、それがアトピーなのか、症状が似ているため素人では判断がつきません(※5)。肌に湿疹がある状態で離乳食を始めてしまうと、特定の食べ物で反応が出ていたとしても、「この湿疹反応は食物アレルギーによるのか?乳児湿疹なのか?」と混乱しかねません。心配な場合は、離乳食をスタートする前に、アレルギー専門医に相談してみましょう。
離乳食で特定の食物に反応が出たら
一般的に、離乳食をスタートするときは一品ずつを少量から始めます。離乳食が進むにつれ、新しい食材を与えたときに、じんましんが出たり、肌が赤くなったりと何らかの反応を示す場合があります。いつもと違う反応があった際には、早めに医療機関を受診してみてもらうようにしてください。
アレルギーを診断してもらうにあたりポイントになるのは、「いつ、どのような状況で、何を食べたときに、どのような症状が出たのか」ということです(※3)。じんましんなどの症状はすぐに消えることもあるので、スマートフォン等で写真に撮っておくと理想的です。問診では、次のような項目を医師に伝えることができるように準備しておくとスムーズでしょう(※6)。
◆問診や診察時に医師に伝えるとよい情報
・食べたもの(メモや写真程度でOK)
・症状(いつ、食べた後に、どのような症状がどのくらい続いたか)
・環境(ペットの有無)
・母乳か、ミルクか
・家族にアレルギーの人がいるか
・他の病気の有無
・飲んでいる薬(お薬手帳の持参でもOK)
こうして医師の問診を受けると、食物アレルギーが疑わしい場合は検査をするようにすすめられます。血液によるアレルギー検査には、実に100種類以上のたくさんの項目があります。そのすべてを検査するわけにはいきませんので、症状が出たら、原因食物にあたりをつけて、的を絞って検査する必要があるのです(※3)。
食物アレルギー診断の方法―血液検査の位置づけ
アレルギーの診断というと血液検査が真っ先に思い浮かぶという人が多いのですが、実は診断のための検査は、「血液検査(特異的IgE抗体検査)」だけでなく、「食物負荷試験」「食物除去試験」「皮膚テスト(ブリックテスト)」などがあります。食物負荷試験と食物除去試験がメインの検査で、血液検査などは補助的な検査という位置づけです(※7)。
ただし、食物負荷試験は実際に食べ物を口にさせてテストを行います。そのため離乳食開始前後の赤ちゃんにとっては負担が大きく、ときにアナフィラキシーショックなどの重い症状を引き起こすリスクがあります。このため、血液検査がとられることがあるのです。
血液検査では、アレルギー反応につながった原因物質に対するIgE抗体の量を調べます。IgE抗体の量を0から6までクラス分けして、0が陰性、1が擬陽性、2から6までが陽性とされます。食物アレルギーの診断としては補助的な検査ですが、IgE抗体の量が多くクラスの数字が高ければアレルギー症状が起きやすい傾向があるということになります(※7)。先にもお伝えしたとおり、血液検査で陽性となった食べ物が必ずしも食物アレルギー症状を出すとは限りませんので注意が必要です。
最近は、血液検査の結果に加えて、実際に症状が出るかどうかの「プロバビリティカーブ」を用いることも増えました。プロバビリティカーブとは、年齢別に症状がどの程度出る可能性があるかを示すカーブ表です(※8)。食物アレルギーの診断には、このように複数のツールを使って総合的に判断を行います。
自己判断はNG、検査結果を判断するのは医師
検査の結果、数値を見て自己判断するのはNGです。検査の結果を判断するのは医師であることをまずは認識しておきましょう。
医師が食物アレルギーであると診断した場合は、一般的な治療として年齢が上がるまで原因となった食べ物を除去していきます(※1、※2、※6、※7)。特定の食べ物を除去している期間は、必要な栄養素が足りないことがあるので、代替食品の指導も受けるようにすると安心です。
年齢が上がるにつれて子どもの消化管機能が成熟してくると、血液検査でアレルギー数値が下がってくることが多いようです。該当の食べ物を食べてもアナフィラキシーを起こす可能性が低くなるなど医師の判断でタイミングをみて食物負荷試験を行います(※1、※2、※6、※7)。食物負荷試験は経口負荷試験などともいわれますが、ここでは詳しくは説明しませんので別の機会に扱いたいと思います。
このように医師と家庭が連携して食物アレルギーに対応していくわけですが、これが一生続くわけではありません。乳幼児期に発症した食物アレルギーは、成長とともに治ることが多く、3歳までに約70%の子がアレルギー症状の出ていた食べ物を食べられるようになるそうです。さらに、9歳になると約90%が治るといわれています(※9)。
食物アレルギーの考え方は変化し続けている
家族にアレルギーの人がいたり、離乳食で過度に心配すると、「とにかく危ないものは除去しておこう」「牛乳と卵はなるべく遅くに始めよう」などと偏った思考になりがちです。しかし、乳幼児期は体の成長にとって大事な時期。食事の栄養にも気をつけなければなりません。特定の食べ物を独断で除去したりせずに、不安があればまずは医師に相談するように心がけてください。
食物アレルギーの研究開発は日々進化しています。従来は、“不要な食物は除去”“離乳食はなるべく遅らせる”等の考え方もありましたが、現在では離乳食は遅らせないほうがいいという考え方になっています(※4、※7)。また、アトピー性皮ふ炎と食物アレルギーが密接に関連していること、アレルギーを防止するために皮ふケアが重要であることなど、新たな事実もわかってきています。
医療業界としても、アレルギー専門学会が立ち上げられたり、アレルギー専門医も増えました。ひと昔前の常識にとらわれずに、不安や心配があれば気軽に医療機関を訪れてみてください。独りよがりではない医師の知識は十分参考になるはずです。
血液検査などのアレルギー検査は万能ではありませんが、子どもの体質や傾向を知ることができ、家庭で使う食品や量に配慮することが可能になります。子どもが食物アレルギーと診断されたとしても悲観することはありません。医師と相談しながら総合的に対応していきましょう。
AlleHapiでは、読者のみなさまに役に立つアレルギー情報を引き続き発信してまいります。
【参考文書】
※1:「小児の食物アレルギー 離乳食を始める前に…」うえの小児科クリニック
※2:「免疫とアレルギーその5 離乳食の進め方」くぼこどもクリニック
※3:「子どものアレルギーについて」キャップスクリニック(医療法人社団ナイズ)
※6:「食物アレルギー・経口減感作療法」医療法人社団げんき会あゆみクリニック
※7:「小児アレルギー・食物アレルギー」有明こどもクリニック
※8:「より安全な負荷試験のために プロバビリティカーブ」ファディア社
※9:「食物アレルギーってどんな病気なの?」うえの小児科クリニック
※10:「食物アレルギー」厚生労働省