アナフィラキシーって何?症状と原因、発症したらどうする?

 

AlleHapi読者のみなさまは「アナフィラキシー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。アナフィラキシーは、食物アレルギーの中でも、もっとも命に関わる怖い症状です。基本的な知識をもち、発症後に早い対応をすることによって子どもを守ることができます。今回は、アナフィラキシーについて特集いたします。

 

 

アナフィラキシーって何?

 

「アナフィラキシー」という言葉を耳にしたことがあっても、実は「アナフィラキシー」と「アナフィラキシーショック」の違いがわからずに使っていることはないでしょうか。はじめに、それぞれの定義をきちんと確認しておきましょう。

 

「アナフィラキシー」とは

アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応(※1)

 

「アナフィラキシーショック」とは

アナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴う場合(※1)

 

少し堅苦しくなってしまいましたが、わかりやすく言うと、全身にわたって複数の臓器に症状が出る場合をアナフィラキシーといい、さらに血圧が低下したり、意識がもうろうとする等ぐったりする場合をアナフィラキシーショックといいます。

 

いずれにしても、どちらも短い時間で急激に容体が変わったり、重い症状へと進行して命に関わる危険があるので注意が必要です。

 

実際にどれくらいの人数がアナフィラキシーになるのか

 

日本において、児童生徒のアナフィラキシーの既往歴を調査したところ、小学生で0.6%、中学生で0.4%、高校生で0.3%だったという報告があります(※2)。つまり、小学校でいうと、児童約170人に1人の割合でアナフィラキシーが現れていることになります。

 

さらに、シビアな話になりますが、食物アレルギーによるアナフィラキシーによって死に至ってしまう確率は、患者10万人当たりでは3.25人(0〜19歳の場合)となっています(※1)。

 

では、アナフィラキシーとは、どんな症状が出て、何が原因なのでしょうか。

 

 

アナフィラキシーの症状

 

日本アレルギー学会では、次の1~3のいずれかに該当すればアナフィラキシーと判断しています。

つまり1のケースだと、全身の皮ふに発疹やかゆみ、赤くなる症状が出たり、または唇や舌などが腫れるなどといった症状に加えて、呼吸困難や喘息などの呼吸器症状や血圧低下・意識障害といった循環器症状が短い時間で出るとアナフィラキシーと診断されます。

 

2のケースは、アレルゲンが体内に入ってから数分~数時間以内に次のような症状から2つ以上を伴う場合になります。皮ふや粘膜症状としては、全身の発疹、かゆみ、赤くなる、むくみがでること。呼吸器の症状は、呼吸困難や気道狭窄、喘息など。循環器症状としては、血圧低下や意識障害、さらに消化器症状として、腹痛や嘔吐が続く場合もあります。

 

3のケースは、アレルゲンが体に入ってから数分~数時間以内に血圧が低下することです。

 

少し難しい専門的な内容が続きましたが、簡略して言うとアナフィラキシーとは2つ以上の重い症状が同時に起こったものといえます。例えば、全身にじんましんが出て呼吸が苦しくなったとき、皮ふがかゆくなって同時に何度も吐いているときなどがアナフィラキシーにあたります。さらに血圧が下がって、意識がもうろうとしてきたらそれだけでアナフィラキシーのショック症状になりますので、すぐに対応が必要になります。

 

 

アナフィラキシーの原因

 

アナフィラキシーは、身の回りのさまざまなことが原因となって発生します。ハチなどの昆虫に刺されたとき、医薬品を投与されたとき、天然ゴムや環境アレルギーの場合もあります。ここでは、食物によるアナフィラキシーの原因について、日本アレルギー学会のガイドラインをもとに説明します(※1)。

 

一般的に、食物で引き起こされるアレルギーは、鶏卵、牛乳、小麦、甲殻類、ソバ、ピーナッツ、ナッツ類、ゴマ、 大豆、魚、果物などが原因となることが多いとされています。欧米では、ピーナッツ、ナッツ類が多いのに対して、日本では鶏卵、乳製品、小麦、ソバ、ピーナッツが多いという地域性もあるようです。

 

また、生命の危機に直結するアナフィラキシーショックですが、この原因食物となったものも割合としてわかっていますので参考にしてください。

 

・鶏卵(28%)

・乳製品(23%)

・小麦(18%)

・ソバ(7%)

・ピーナッツ(5%)

・エビ(3%)

・イクラ(2%)

・モモ(2%)

・大豆(2%)

・キウイ(2%)

・バナナ(1%)

・ヤマイモ(1%)

・その他(6%)

 

卵や牛乳、小麦やソバは離乳食時に慎重になる方が多いですが、これを見てわかるとおりモモやバナナをはじめて与える際にも気をつけたいものです。

 

また、該当の食べ物を食べただけでは症状が出ないのに、食べてから時間以内に運動することで症状が引き起こされるアナフィラキシーもあります。これを「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」と言います。学童や生徒では約0.0085%(約12000人に1人)の頻度で、男の子に現れやすいようです。原因食物は小麦製品や甲殻類、原因食物を食べてから4 時間以内の運動で発症することが多いといわれています。

 

学校や幼稚園などでアナフィラキシーの事故が発生すると大きな話題になりがちですが、食物によるアナフィラキシーは自宅で発生する頻度が最も高いとされています。自宅でアナフィラキシーの症状が現れたら、一刻も早く対処しなければなりません。大人が動揺して、子どもの命を危険にさらさないためにも対処方法をみていきましょう。

 

 

アナフィラキシーを発症したらどうする?

 

一般社団法人日本アレルギー学会と厚生労働省が運営している「アレルギーポータルサイト」(※3)によると、アナフィラキシーを発症したらとるべき対応があります(※4)。

 

これまでにみてきたようにアナフィラキシーは、皮ふが赤くなったり、息苦しくなったり、吐くなどの複数の症状が同時に、かつ急に進みます。血圧が下がって、ぐったりとしてぼーっとするなど、意識がはっきりしない状態ではアナフィラキシーショックに陥っている可能性が高くなります。命を守るためにも迅速な対応が必要です。

 

アナフィラキシーは一刻を争いますので、「アドレナリン自己注射薬(エピペン®)」がある場合はすぐに打つようにすすめられています。そのうえで、必ず救急車を呼んで医療機関へ搬送してもらいます。「アドレナリン自己注射薬(エピペン®)」については、この後、補足します。

 

アナフィラキシーショックではなさそうかな…という場合でも、喘息の発作や呼吸困難の症状が強い場合は、アドレナリン自己注射薬(エピペン®)を持っていれば症状の経過をみながら救急車が来るまでに打つようにとされています。

 

全般的にいえることとして、体位は、足を頭より高く上げて寝かせるのがよいようです。また、嘔吐してしまう場合に備えて、顔を横向きにすることも忘れないようにしましょう。食物が口の中に残っていれば、すぐに出して水でゆすぐことをすすめる医師もいます。原因となる食物が体に付着していたり、手でさわったりした場合は、水で洗い流すこともひとつです(※5)。

 

いったんアナフィラキシーの症状が治まったと思っても、時間をおいて再び症状が出る場合もあります。しばらくは注意深く様子をみて、医師に相談しましょう。

 

実際のところ、アナフィラキシーの重症度によって具体的な治療が違います。ただし、だんだんと元気がなくなる意識障害などがある場合には、呼吸や心拍がゆっくりになっていっていないか、皮ふの色が赤くなってきていないか等を確認しつつ、必要に応じて一次救命措置を行い、医療機関への搬送を急ぎましょう。

 

アドレナリン自己注射薬(エピペン®)とは

 

「アドレナリン自己注射薬(エピペン®)」は、アナフィラキシーが現れたときに使用するもので、医師の治療を受けるまでの間、症状の進行を一時的に緩和し、ショックを防ぐための補助治療剤です(※6)。アドレナリンの効果で、心臓の働きを強くし、血圧を上げ、気管支を広げて呼吸を楽にするといった即効性があります(※7)。

 

ペン型で持ち歩きしやすいような形状になっており、アドレナリンの製剤を自分で注射できるようになっています。子どもの場合は自分で注射できないので、周りにいる大人が注射することになります。そのため、親だけでなく、近親の祖父母なども打ち方を理解しておくと安心です。

 

ちなみに幼稚園や保育園、学校などでは、子どもが発症した際に教職員がエピペン®を打つ可能性もあります。そのため、「保育所におけるガイドライン」や「学校のアレルギー疾患に関する取り組みガイドライン」など、アレルギーやアナフィラキシーに関わる各種ガイドラインが整備されています。先生方も研修や勉強会で知識と経験を積んでいます。

 

いずれにしても、エピペン®はあくまでも補助的な治療剤です。医師が処方し、使い方も医師が指導しますので、不特定多数の全員に処方されるものではありません。また、エピペン®を注射した後は、直ちに医師による診療を受ける必要がありますので覚えておきましょう。

 

アナフィラキシーを発症させないために

 

アナフィラキシーは発症した本人が一番つらいですが、そばにいる人も動転してしまいがちです。突発的な事情でアナフィラキシーが出てしまうこともあるかと思いますが、できるだけ予防したいですよね。この特集の最後に、アナフィラキシーを発症させないための対策を3つご紹介します。

 

はじめての食物は慎重に

 

離乳食がスタートする乳幼児期は、何もかもが“はじめて”の食べ物です。よく小さじ1杯からなどと言われますが、心配な場合は耳かき1杯程度からスタートしてもよいでしょう。

 

可能であれば平日の午前中にはじめての食べ物を試してみましょう。平日の午前中であれば、あいている医療機関が多いので、何かあった場合にすぐに医師にみてもらうことができます。

 

また、家族に食物アレルギーの人がいるからといって、必ずしも家族全員が同じ食物アレルギーになるわけではありませんが、不安があれば事前に医師に相談することをおすすめします。

 

原因食物を特定する・食べない(触れない)

 

これは医師に相談しながら進めることになりますが、心配が強い場合は原因食物を特定しておくという方法もあります。専門の医師の問診を受けたうえで、血液検査や食物負荷試験などを通して判断してもらう方法です。

 

一度アナフィラキシーを発症している場合は、再度アナフィラキシーにならないように、医師から原因となった食べ物をしばらく避けるように指示されることが一般的です。原因食物に触れるだけでも発症することがあるので、接触しないことも大切になります。

 

ただし、近年、食物アレルギーの研究が進み、さまざまな治療方法が開発されています。従来の“食べない”という対策だけでなく、専門の医師の管理のもとで連日にわたり原因食物を少しずつ食べていくことで、原因食物が食べられるようになるという経口免疫減感作療法も認知されはじめています(※8)。気になる場合は自己判断せずに、かかりつけ医に相談してみましょう。

 

周囲の人に知ってもらう

 

誤って食べてしまった…ということがないように、特定の食べ物でアナフィラキシーを起こす可能性があれば、「わが子には食物アレルギーがある」「この食べ物でアナフィラキシーを起こす可能性がある」ということを周りの人に伝えておきましょう。

 

ときどき、アレルギーがあることを隠したがる人がいますが、子どもの身を守るためにも周囲の人にきちんと理解してもらったほうが安心だと思います。周囲の人に知ってもらうだけで、おやつに配慮してくれたり、原因食物から遠ざけたりと身を守ってくれます。例えば、幼稚園や学校ではアレルギー対応の給食になっている場合が多いと思います。アレルギーがあるという事実を、子ども本人や担任、保健師だけではなく、クラスの同級生にも知ってもらうこともポイントになります。

 

 

いかがでしたか?

アナフィラキシーを発症したら、まずは冷静に見極めて対応することが肝心です。そのためには、事前に知識を得て、不測の事態に備えることが大事です。当サイトAlleHapiでは、読者のみなさまに役に立つアレルギー情報を発信してまいります。

 

 

【参考文書】

※1:「アナフィラキシーガイドライン」2014年(日本アレルギー学会Anaphylaxis対策特別委員会)

※2:「『学校生活における健康管理に関する調査』中間報告」2013年、学校給食における食物アレルギー対応に関する調査研究協力者会議資料(文部科学省)

※3:「アレルギーポータル」一般社団法人日本アレルギー学会(厚生労働省)

※4:「アレルギーポータル『アレルギー対策アナフィラキシー』」(一般社団法人日本アレルギー学会、厚生労働省)

※5:「アナフィラキシーが起こったら『アナフィラキシーってなあに.jp』」(マイランEPD合同会社)

※6:「エピペンを処方された患者様とご家族のためのページ『エピペンとは』」(マイランEPD合同会社・マイラン製薬株式会社)

※7:「『明治の食育』食物アレルギーを知ろう アナフィラキシーとは?」(株式会社明治)

※8:「経口免疫療法」独立行政法人国立病院機構相模原病院