離乳食スタート前後に考えたい食物アレルギーのこと
食物アレルギーを発症するのは、1歳未満の赤ちゃんが多いといわれています。この時期は、母乳やミルクから離乳食へと移行する大事な時期にあたります。ママにとっては、「いつごろから離乳食をスタートしようかな」「アレルギーが出やすい食材は与えない方がいいのかな」などと心配になりますよね。今回は、離乳食スタート前後に考えておきたい食物アレルギーについてお伝えします。
アレルギー予防のために離乳食のスタートを遅らせるべき?
誕生してからこれまで母乳やミルクのみで育った赤ちゃんに、はじめに離乳食をあげるときは不安になるものです。ましてや食物アレルギーを心配しだしたらきりがありません。また、祖父母世代の頃とは離乳食の考え方も変わってきています。次のことを念頭におきながら、赤ちゃんの様子に合わせて離乳食を始めましょう。
◆離乳食スタートは標準的な時期に
ひと昔前の離乳食ガイドラインでは、アレルギーが心配なときは離乳食を遅らせたほうがよい、牛乳や卵などアレルギーを引き起こしやすい食べ物は除去するのがよいとされた時期もありました。その後、科学的な研究が進んだ結果、最新のガイドラインでは離乳食のスタートを遅らせることなく適切な時期に開始するほうがよいとされています(※1)。
さらに、離乳食を開始する時期を遅らせても、食物アレルギーのリスクを軽減するとは限らないということも解明されています(※2)。むしろ、色々な食べ物を早めに食べたほうが、食物アレルギーを発症しにくいという報告まであるようです(※3)。
◆離乳食スタートは生後5~6カ月が標準
一般的に離乳食を始める適切な時期は、生後5~6ヵ月頃とされています(※1)。もちろん、開始にあたっては赤ちゃんの食欲や成長、発達、地域や家庭の食文化を考慮しなければなりません。あくまでも目安の時期なので焦る必要はありませんが、赤ちゃんの発達段階としては以下を参考にしましょう(※2)。
<離乳食のはじめどき赤ちゃんのサイン>
・大人が食事している様子をじっと見ている
・自分も大人の食べているものを欲しがるようになる
・授乳リズムが3~4時間の間隔になってきている
・スプーンなどを口に入れても、舌で押し出すことが少なくなる
・首がすわっている
・大人が支えると自分で座ることができる
このような様子が見られるようになってきたらそろそろ離乳食を始めるサインになります。
◆離乳食開始前に医師に相談したほうがよい場合も
ただし、家族に食物アレルギーの既往歴がある場合は、あらかじめ医師に相談したほうが安心です。医師の診断を受けずに、「上の子が牛乳アレルギーだから、下の子の離乳食でも牛乳は与えない」などと自己判断で食品の除去を行っているママもいるようですが、必ず医師の判断を仰ぐようにしてください。子どもの成長や発達に影響するおそれがありますので独断は禁物です。
離乳食をすすめるポイント5つ
次に、食物アレルギーのリスクを抑えながら、どのように離乳食をすすめていけばよいのか5つのポイントを確認していきます。
◆<ポイント1>食材の摂取推奨時期を守る
厚生労働省発行の「授乳・離乳の支援ガイド」によると、離乳食を最初に始める際には、アレルギーの心配が少ないおかゆ(米)からがよいとされています。だんだんと慣れてきたら、じゃがいもや野菜、果物も試してみます。さらに慣れたら豆腐や白身魚など、種類を増やしていくようになります。満1歳までの子どもがはちみつを食べてしまうと、「乳児ボツリヌス症」という病気かかる可能性があるので、はちみつには注意しましょう(※1)。
離乳がすすんでいくと、卵は卵黄(固ゆで)から全卵へ、魚は白身魚から赤身魚、青皮魚へと広げていきます。乳製品であるヨーグルト、塩分や脂肪の少ないチーズも利用できるようになります。食べやすく調理した脂肪の少ない鶏肉、豆類、各種野菜、海藻へと種類を増やしていきます。脂肪の多い肉類は少し遅らせるほうがよいようです。
離乳食のことをさらに詳しく知りたい場合は、乳幼児健診や地域の保健センターなどでも相談にのってくれます。お住まいの地域センターや健康保健センターなどで、離乳食講習会などが開催されている場合もありますので問い合わせてみてください。
離乳食で推奨されている食材やすすめ方は、赤ちゃんの発育や消化器官の発達状況等も考えられたものです。推奨された時期よりも早く食材を与えることは危険を伴います。新しく食材を与える際には、摂取が推奨されている時期を確認するようにしましょう。
◆<ポイント2>はじめての食材はひとさじから
米のおかゆから始めて、じゃがいもなどと徐々に離乳食をすすめることになります。いつのタイミングにおいても、はじめての食材を与える際は“ひとさじ”スプーン1杯からスタートするようにしましょう(※1、※2)。
赤ちゃんによっては、離乳食が大好きでもっと欲しいと食べたがる子もいます。しかし、はじめての食材はスプーン1杯からを守り、心配な場合は耳かき1杯から始めてもよいでしょう。赤ちゃんの消化機能はまだまだ未熟です。はじめての食材を消化するために内臓に負担がかかりますし、アレルギー反応が出てしまう恐れもあります。特に、牛乳や卵、小麦は食物アレルギーの出やすい食材だといわれていますので、慎重にステップを踏むようにしてください。
また、新鮮な食材を十分に加熱して与えるのも大切なポイントです(※2)。赤ちゃんは細菌への抵抗力が弱いので、衛生面にも注意して調理を行いましょう(※1)。
◆<ポイント3>離乳食をはじめるなら体調のよい平日の日中が◎
離乳食のはじめは1回食からスタートします。これは1日の食事のうち1回のみを離乳食にして、あとは母乳やミルクを与える方法です。赤ちゃんによっては、離乳食を食べたがらない子もいますし、母乳以外は口に入れたくないという子もいます。離乳食をはじめる場合は、赤ちゃんの体調と機嫌のよい日から始めるといいでしょう。
また、平日の日中に離乳食を与えると不測の事態に対応しやすくなります。平日の日中には多くの医療機関があいています。そのため、食物アレルギーの反応が出てしまった際に、すぐに医師にみてもらえるからです(※4)。
◆<ポイント4>牛乳・卵なども自己判断で除去しない
小さい子どもに最も多い食物アレルギーは、卵によるものです。次に牛乳、小麦と続きます。現在は、このような食材も遅らせることなく開始時期の範囲内ですすめることが推奨されています(※4)。
なかには、すでに離乳食をはじめる前に血液検査をして食物アレルギーの可能性を調べてもらったというケースもあると思います。確かに血液検査は、様々な食物に対する抗体を調べてくれるものです。しかし、検査の結果が陽性であったとしても、食物アレルギーが必ず発症するわけではありません。逆に検査で陰性だった食物でもアレルギー症状が出てしまうケースもあります(※4)。これが離乳食開始前の子どもには血液検査は不要だといわれるゆえんであり、検査結果をもらったとしてもあくまでも参考としておきましょう。
特定の食物を自己判断で除去したり、食材の数を減らしてしまうことはむしろ子どもの健康に害になるという意見もあります(※4)。それぞれごく少量から、調理方法を守って与えていきましょう。心配な場合は必ず医師に相談するようにしてください。
◆<ポイント5>皮ふの状態に気をつける
近年、食物アレルギーの研究では経皮感作(けいひかんさ)というメカニズムもわかってきています。これは、アトピー性皮ふ炎などで皮ふをかきむしったりすると、皮ふのバリア機能が壊れた部分から空気中に含まれるわずかな食物が体内に入ってアレルギー反応を起こすというものです。
そのため、アトピー性皮ふ炎などがある赤ちゃんは、医師の判断により離乳食前でもアレルギー検査を受けたり、離乳食の時期や内容を調整される場合があります。これは、皮ふの状態をみてアレルギー体質が疑われるためです。アレルギー体質が疑われる赤ちゃんは、食物に対しても過敏に反応をすることがあり、食物アレルギーを発症する可能性があるといわれています(※6、※7)。
このように、赤ちゃんの皮ふの状態と食物アレルギーは関連があるという報告があります(※3)。赤ちゃんの時期は、乳児湿疹がでたり、ちょっとしたことで皮ふが赤くなったりするため非常にデリケートです。日頃から皮ふの状態を観察して、スキンケアを入念にしてあげるようにしましょう。
赤ちゃんの湿疹は、乳児湿疹なのか、アトピーなのか見分けるのは専門家でも難しいといわれています。心配なことがあれば遠慮せずに医療機関を受診することをおすすめします。
離乳食を楽しい時間に
AlleHapiでは、ひとりでも多くの赤ちゃんやママに食物アレルギーの不安をなくし、食事の時間を楽しんでほしいと考えています。人生において、食事は毎日の日課であり、なくてはならないものです。離乳食はそのファーストステップ。
はじめての食材を赤ちゃんに食べさせるときは、誰しも少し緊張するものです。万一、何か異変があったとしても、かかりつけの医師にすぐにみてもらえるように備えておくと慌てずに安心できます。
赤ちゃんにとって、離乳は成長の証です。離乳食の時間が親子にとって楽しいひとときになるように願っています。
【参考文書】
※4:「子どものアレルギーについて」キャップスクリニック(医療法人社団ナイズ)
※5:「リウマチ・アレルギー相談員養成研修会(「第4章 食物アレルギー」)」厚生労働省