はじめに 食物アレルギーとは
厚生労働省によると、約50年前の日本において、アレルギーはほとんどありませんでした。それが、現在では3人に1人が何らかのアレルギーを持っているといわれています。工業化や文明化に伴って、食物アレルギーは約15年前から急増しています。子どもから大人まで発症が認められており、中には深刻なケースもあります。
このサイトAlleHapiでは、食物アレルギーについて、正しくわかりやすい情報をお伝えしていきます。
◆食物アレルギーの基本
食物アレルギーは、簡単にいうと食べ物が原因で、体にじん麻疹や湿疹、下痢、咳などの症状が起こることをいいます。食べ物を食べた時だけでなく、触ったり、吸い込んだり、注射で体内に入った時にも起こります。
我々の体内では、自分の体の成分と違うものが入ってくると、これを異物と認識して攻撃し排除する仕組みがあります。これが「免疫」と呼ばれるものです。アレルギー反応も広くは免疫反応の一部とされていますが、異物に対して反応するときに自分の体まで過敏に傷つけてしまう場合をアレルギー反応と呼んでいます。そのため、アレルギーは日本語でいうと「過敏症」と訳されているのです。
食物アレルギーでは、ある食べ物成分が異物として認識されると、それを排除するためにアレルギー反応が起こります。アレルギーの原因となる物質が血液にのって全身に運ばれるため、眼や鼻、のど、肺、皮膚、腸などでさまざまな症状が現われてしまうのです。
◆アレルゲン(食物抗原)とは?
アレルギー反応が起こるのは、原因となる物質が関連しています。この原因物質を「アレルゲン」と呼んでいます。免疫学の言葉では、「抗原」とも呼ばれます。特に食物に由来する場合は、「食物アレルゲン」や「食物抗原」といわれます。
“食物”というとかなり広範にわたりますが、すべての食物でアレルギーがでるわけではありません。これまでの経緯から、食物アレルギーを引き起こすことが明らかになった食品が知られています。そのうち、症例が多いものや症状が重篤な7品目は「特定原材料」といって注意喚起がなされています。
【特定原材料】
卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かに
この特定原材料は健康への影響が大きいこともあって、これらを含む加工食品には法令で表示が義務づけられています。
さらに特定原材料に加えて、これまでに一定の頻度で健康被害が見られた20品目は、「特定原材料に準ずるもの」と指定されています。
【特定原材料に準ずるもの】
あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆
鶏肉、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン、バナナ、ごま、カシューナッツ
特定原材料に準ずるものについては、これらを含む加工食品に可能な限り表示をするようにとされています。
◆小さい子どもに多い食物アレルギー
食物アレルギーの大部分は乳児期に発症するといわれています。その後、年齢があがるにつれて、アレルゲンを含んだ食べ物もだんだんと食べることができるようになるケースが大半です。これを専門用語では“寛解”するといいます。
子どもの年齢別でいうと、食物アレルギーを発症するのは1歳前後が最も多い状況です。アレルゲンとしては、卵・牛乳・小麦・大豆が主要な抗原になっています。
このような小児型の食物アレルギーの特徴としては、大部分の症例で自然に良くなることです。悩んでいる親御様にとっては、気持ちが少し軽くなるのではないでしょうか。
具体的には、1歳で食物アレルギーと診断されたとしても、そのうちの9割の子は小学校入学までには自然に寛解すると考えられています。ただ、残り1割の中には、いつまでも卵が食べられないなどという場合もあります。
◆どのアレルゲンが多いのか
小さい子どもに最も多い食物アレルギーは、鶏卵によるものです。次が牛乳になります。3位は、頻度は低くなりますが小麦です。
食物アレルゲンに占める割合でみてみると、3歳では卵と牛乳で全体の62%を占めています。食物アレルギーを発症した子の6割以上がこの2大アレルゲンが原因なのです。
ただし学年が進むと、小学校1年では卵・牛乳の割合は54%へ、5年生になると49%へと低下していきます。中2になると牛乳がエビ・カニあるいは魚類に抜かれ4位となります。
つまり、乳幼児期に発症した小児型の食物アレルギーは、成長するにつれてこのように低減していくのが特徴です。
◆わが子は食物アレルギーなの? その判断方法
子どもに湿疹がでたり、家族にアレルギー体質の人がいたりすると、「わが子も食物アレルギーがあるかもしれない…」と心配になるものです。実際のところ、インターネットで「食物アレルギー」と検索するだけで、膨大な情報が見つかりますし、医師によっても考え方が違います。
ご存知のとおり、食物アレルギーは毎日の食生活に直結した問題です。そのため、親などが経験的に判断して「この食物にアレルギーがあるにちがいない!」と自己診断しているケースが問題視されています。親が牛乳アレルギーだからといって、必ずしも子どもがそうであるとは限りません。
当然ながら、自己診断は単なる思いこみだったり、そもそも間違っているケースもあります。実際のところ、食物アレルギーの診断は熟練した小児アレルギーの専門医でも大変難しいといわれているのです。
大切なことは、信頼できる医師に話をしてみてもらうことです。一般的には、詳細な生活歴が質問されます。小さい子であれば、例えば環境面としてペットとの接触があるか、栄養面として母乳栄養か人工ミルクの栄養か、離乳食との関係などが聞かれます。加えて家族歴やアレルギー病歴(出た症状と食べ物との因果関係など)も聞かれます。
このような医師による問診を受けはじめて、アレルギーの検査が行われるということを理解しておきましょう。
◆食物アレルギーへの考え方は変わってきている
食物アレルギーの研究は日々進化しています。近年では、食物アレルギーの発症は、“食べる”ことで起こる以外に、“皮膚のバリア機能”が低下したために起こるものもあると考えられています。
つい最近までは、食物アレルギーにならないように「離乳食は遅くスタートする」「アレルギーを起こしがちな食材は除去しておく」のがよいとされていました。研究が進んだ現在では、「経皮感作(けいひかんさ)」といってアトピー性皮膚炎などで皮膚のバリア機能が壊れ、その壊れた部分から空気中に含まれるわずかな食べ物が体内に入ってアレルギー反応を起こすというメカニズムも解明されてきています。
このような最新の情報は個人で入手するのは限界があります。心配や不安がある場合は、遠慮せずに医師に尋ねるようにしましょう。
◆信頼できる情報で正しい知識を
サイトやブログ、SNSを含め、食物アレルギーにまつわる情報があふれています。情報がたくさんある分、その内容の真偽が不明なものも混ざっています。食物アレルギーを簡単に考えてはいけません。ときに「アナフィラキシー」といった生死にかかわる重大な事故を起こしかねないのです。
このサイトAlleHapiは、皆様に安心してご覧いただけるように、信頼できる情報を提供し、正しい知識で食物アレルギーに対応できるようにすることが目的です。
今後は、順次、次のようなお役立ち情報をお届けする予定です。
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※参考文書
・厚生労働省『リウマチ・アレルギー相談員養成研修会(「第4章 食物アレルギー」)』
・一般社団法人日本アレルギー学会『一般の皆様へ「アレルギーを知ろう」』
・一般財団法人日本食品分析センター『食物アレルゲン検査(特定原材料・特定原材料に準ずるもの)』